ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (10) マグカップに棲むムネアカイツホシデオテントウ

ひとは

 かわいくてきれいな

   こんちゅうをそうぞうする


 妄想昆虫採集とは - 昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された生き物たち,すなわち「妄想昆虫(※)」を採集・目撃観察するという試みです.「妄想昆虫」は,ひとびとの心(観念)という「選択圧」によって独自の「進化(妄想進化)」をとげ,衣類の上や商品のパッケージなど,実にさまざまな場所に「適応放散」しています.さあ,一緒に「妄想昆虫」をさがしてみましょう.地道な「妄想昆虫」の採集・観察活動は,文化昆虫学の研究をすすめていく上で,新たなインスピレーションをあたえてくれることでしょう.

※ 「妄想昆虫」「妄想進化」は,当ブログ用にわたしが作った造語です.ご注意下さい.


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 テントウムシは,もっとも普通に見られる妄想昆虫の一種です.私は,これまでに見てきた「妄想テントウ」のほとんどが赤と黒を基調としていることなどから,そのモデルはナナホシテントウではないかと推測しています.当研究所では,その推測(仮説)が正しいかどうかを調べるために,様々な生息環境に適応した妄想テントウの種類相を調査しています.


 さて今回は,100円ショップで購入したマグカップに生息するテントウムシを紹介したいと思います.

 その形態的特徴から,本種をムネアカイツホシデオテントウと名付けました.以前紹介した,リストバンドに棲むイツツホシテントウに似ていますが,どうやら別種のようです(イツツホシテントウの詳細は,ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (4)を参照).

 本種もイツツホシテントウと同じく赤と黒を基調としており,斑紋数もその配列も酷似しています.しかしながら,イツツホシテントウは胸部が黒いのに対して,本種の胸部は赤色です(それゆえに,「ムネアカ」です).さらに,本種の腹部末端節背板が鞘翅から露出しています(つまり,腹部の背中側の末端部が,折りたたまれた翅で覆われていないということです).このような特徴をもつ甲虫には,よく「デオ(出尾)XXX」という名前が宛てられます.

 本種も,その形態的特徴からナナホシテントウをモチーフにしていると考えられますが,イツツホシテントウナナホシテントウムシモドキよりも,原種であるナナホシテントウとの形態的差異が大きいように思えます.つまり,本種はイツツホシテントウやナナホシテントウモドキよりも,さらに妄想進化の進んだ種なのではないかと考えられるのです.

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 妄想昆虫の採集・観察記録を蓄積することは,「どのような種類の昆虫が,どのような文化メディアで用いられているのか?」という文化昆虫学における根本的な問題を解明するために,大変重要なことだと思われます.あなたも,わたしたちと一緒に,「妄想昆虫」を採集しませんか?

 求!情報!



(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)


※妄想昆虫採集に関する詳細は,以下をご確認ください.

[妄想昆虫について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (1)

[妄想進化について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (2)