ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (6) プリンのふたに棲むトンボ

ひとの

 こころのなかでしんかした

   こんちゅうたちをみつけよう


 妄想昆虫採集とは - 昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された生き物たち,すなわち「妄想昆虫(※)」を採集・目撃観察するという試みです.「妄想昆虫」は,ひとびとの心(観念)という「選択圧」によって独自の「進化(妄想進化)」をとげ,衣類の上や商品のパッケージなど,実にさまざまな場所に「適応放散」しています.さあ,一緒に「妄想昆虫」をさがしてみましょう.地道な「妄想昆虫」の採集・観察活動は,文化昆虫学の研究をすすめていく上で,新たなインスピレーションをあたえてくれることでしょう.

※ 「妄想昆虫」「妄想進化」は,当ブログ用にわたしが作った造語です.ご注意下さい.


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 妄想昆虫は,意外なところに棲んでいます.
 実際の虫捕りをしていて,網を持っていないときに限って,自分が捕りたかった昆虫が目の前に現れるかの如く,妄想昆虫にも出会うことがあります.


 先日,家の冷蔵庫をのぞきこむとプリンがありました.



 森永乳業株式会社の森永牛乳プリンです.

 わたしは,プリンが好きです.これを冷蔵庫で見てしまうと,ついつい食べてしまいます.

 食べ終わった後に,蓋をみてびっくりしました.蓋の上側をみてください.なんと・・・



 こんなところにトンボがいます.太陽のそばを気持ちよさそうに飛んでいます.



 拡大してみると,かなりシンボライズされているのがわかります.このように極端にシンボライズされることで,トンボは食品のパッケージというものに適応できるのでしょう.リアリティの高い昆虫のイメージというのは,多くの人々が嫌悪感をいだきうるでしょう.ましてや,食品と結びつけるなどというのが好まれるとは思えません.

 もうひとつは,トンボという種類だからこそ,食品パッケージに適応できたというのもあるでしょう.トンボは,衛生害虫や不快害虫ではなく,むしろ日本では歴史的に縁起のよいものとされる文化昆虫といえます(かつては勝ち虫とも呼ばれていました).本パッケージでは,脳天気に気持ちよさそうに飛ぶトンボは,太陽の「なんとかなるさ」という台詞をひきたたせるかのようです.


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 妄想昆虫の採集・観察記録を蓄積することは,「どのような種類の昆虫が,どのような文化メディアで用いられているのか?」という文化昆虫学における根本的な問題を解明するために,大変重要なことだと思われます.あなたも,わたしたちと一緒に,「妄想昆虫」を採集しませんか?

 求!情報!



(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)


※妄想昆虫採集に関する詳細は,以下をご確認ください.

[妄想昆虫について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (1)

[妄想進化について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (2)