ブドウ虫にもバイオテクノロジーの光がとどく - 釣りと文化昆虫学(利用昆虫学)

<釣りと文化昆虫学>


 2009年12月6日

 高槻の水無瀬というところへ渓流釣りに行ってきた.


 ここには,自然の河川を利用した釣り堀があり,漁協のひとにアマゴやニジマスを放流してもらい,それらを釣ることができる.大人から小さい子供まで楽しめる場所である.


 何故,そのような釣りのはなしをここでするのかというと,釣りをする際に用いたえさのひとつが昆虫だったからである.

 まずは,こちらをご覧いただきたい.

 釣りのえさに用いたのは,釣り堀の管理事務所(漁協)で購入したいくら(右)と,もうひとつ・・・

 商品名「キングリバー」こと,ブドウ虫である.


 中身は,

 このように幼虫の巣になっている.


 そして・・・・

 こちらが幼虫の本体である.



 ブドウ虫は,昔から渓流釣りのえさとして有名である

 しかしながらこの写真にとったこのブドウ虫は,一体何という種類の幼虫なのであろうか?

 何となく,チョウ目の幼虫であろうことは想像できたが・・・.


 ブドウ虫というからには,ブドウをホストにした幼虫なのだろう・・・と想像していたら,実際には全く違っていた.ただし,最近の養殖ものについては・・・である.


 この写真に写っている幼虫の正体はハチノスツヅリガ Galleria mellonella (Linnaeus, 1758)であり,ミツハチの巣などを食い荒らす害虫である,養殖しやすいことなどから,ハチノスツヅリガの幼虫が一般にブドウ虫として出回っているようだ.ちなみに,釣りえさに用いるものはホルモン処理して大型化させたえうえに,蛹化しないようにしているという(後者は,逃げ出した際に害虫化しないようにするため).このようなところにも,バイオテクノロジーがいかんなく発揮されているのである.なおハチノスツヅリガは,モデル動物としても生物実験等でよく用いられるようである.

 元祖のブドウ虫はというと,ブドウスカシバ Nokona regalis (Butler, 1878)という蛾の幼虫であり,実際にブドウから採集されるもののようである.成虫は,ハチに擬態しているという.ブドウスカシバの幼虫は,ハチノスツヅリガのようには簡単には養殖できないようであり,ハチノスツヅリガを養殖ブドウ虫というのに対して,天然ブドウ虫と言われ重宝されるとのこと.


 ちなみに,ブドウ虫で・・・

 アマゴもニジマスも・・・

 そして,こんなものまで釣れた(カワムツあるいはヌマムツ).


 養殖物のブドウ虫でも本当に魚の食いつきがよく,よく釣れるえさであることを実感した.ただ,わたしは天然のブドウ虫を使ったことがない.天然物 vs 養殖物.ひびきとしては前者のほうがよいが,機能的にはどちらのほうがすぐれているのだろうか?是非,試してみたいものである.



(研究主幹:シラトリ・ヨシエ)