世界一の昆虫たち from ギネスブック 2000

 ギネスブック2000(Guiness World Records 2000)より,何かの基準で世界一を誇るという昆虫をあつめてみた.世界一という言葉は何かとひとびとの心にひびき,結果として大きな関心をうむことがある.しかしながら,一体どれほどのひとに,これらの昆虫のギネス記録が知られているのだろうか?昆虫の世界記録というものが,どれほど人々の関心をひくものなのか・・・,おもしろいテーマかもしれない.いずれ調査してみたいと思う.

 なお,世界一の昆虫の中には,大きさや重さだけでなく,その機能に関するものも存在する.なかには,その機能が人類の文化となんらかの形で結びついていることから,文化昆虫学的に重要な種(分類群)も混じっている.サバクワタリバッタやハマダラカなどがそうである.



★ [世界一「重い」昆虫 — ゴライアスオオツノハナムグリ]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 重量は,70-100gにも達する.飛んできた個体が頭にあたったら,怪我をしそうである.


★ [世界一「長い」昆虫 — Pharnacia kirbyi(ナナフシ目)]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 体長は32.8cm,脚も含めた長さは54.6cmにもなるという.ちなみに筆者は,某国の密林でスウィーピングをしていて,体長25cmほどのナナフシを採集したことがある.世界一には至らないが,それでも迫力満点であった.


★ [世界一「長寿の」昆虫 —Buprestis aurulenta(タマムシ科)]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 記録によると,そのタマムシは幼虫の状態で少なくとも51年は生きていたという.この手の材食性昆虫のなかには,栄養条件が悪いとなかなか蛹化に至らない種がいるようで,家の家具からカミキリやタマムシなどがひょっこり出てきたという話がまれにある.


★ [世界一「速く飛ぶ」昆虫 — Austrophlebia costalis(トンボ目)]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 オーストラリアに住むトンボの一種.最高速度は,時速58kmに達する.ハエ目には,これを凌駕するような種類がいるような気もする.


★ [世界一「速く這い回る」昆虫 — Dychoptera科の一種(ゴキブリ目)]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 時速5.4km.


★ [世界一「うるさい」昆虫 — セミ目]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 400m離れたところでも聞こえるとのこと.セミの声は,日本ではしばしば夏の風物詩としてとらえられるが,西洋ではただの雑音として扱われる.とはいうものの,日本でもセミは意外にも嫌われ者の昆虫であるということが某所での(非学術的)アンケート調査でわかった.


★ [世界一「大きな」蝶 — アレキサンドラ・トリバネアゲハ]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 開長28cm.重さ25g.なお,本種を採集するために銃を用いて打ち落としたという話も存在する.


★ [世界一「破壊的で有害な」昆虫 — サバクワタリバッタ]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 しばしば大発生して,農作物に深刻な打撃をあたえる. 5000万匹のサバクワタリバッタが食する農作物の量は,500人の食料1年分に相当するという.サバクワタリバッタは,しばしば大発生し農作物に大打撃をあたえることから,歴史上もっとも人類の生活に対して影響力の強い昆虫のひとつ(農業害虫として)とされており,その大発生の話は聖書などにも登場するという.本種は,人類の歴史(特にアフリカ地域)に大きな影響をあたえた昆虫として,文化昆虫学の分野では注目されている.


★ [世界一「危険な」動物 — Plasmodium sp.]

 ハマダラカの一種.マラリアを媒介する.人類の歴史にかかわる最も重要な昆虫のひとつである.なお1997年の世界保険機構による調査では,年間150万人がマラリアにより死亡しているとされる.本種は,前種とともに人類の歴史(特にアフリカ地域)に大きな影響をあたえた昆虫のひとつとして,文化昆虫学の分野では注目されている.一般的に,ハマダラカにかぎらずカの仲間には,病気を媒介する衛生害虫が多く含まれる(例えば,日本脳炎デング熱などは,別の種類のカによって媒介される病気である).また,その吸血するという行動も加わって,不快昆虫としての知名度も高い.カは,多くのひとびとに特に嫌われている昆虫のひとつである.多くの人々は,カの撲滅を強く望んでいる.そのような思いは,カやハエ,ゴキブリに向けられている.


★ [世界一「危険な」ハチ — Apis mellifera sutellata]

(Guiness World Records 2000. Danger & disaster – Animal attack: 200-201 p.より)

 Apisということは,ミツバチの仲間であろう.一般的に,社会性のハチに集団でおそわれると大変危険(巣などに近づいたときに襲われる)である.より大型のオオスズメバチ(日本)の方が,なにかと危険なのではないのだろうか?


★ [世界一「危険な」アリ — Solenopsis invica(Fire ants)]

(Guiness World Records 2000. Danger & disaster – Animal attack: 200-201 p.より)

 何かと問題らしい.衛生害虫である.


★ [世界一「大きな」クモ — Theraphosa leblondi]

(Guiness World Records 2000. Knowledge – Zoology 2: 42-43 p.より)

 南アメリカベネズエラ)に生息する.体長は28cmに達するという.演技指導さえできれば,ホラー・パニック映画では即戦力となりそうな大きさである.


★ [世界一「強力な毒をもつ」クモ — Phoneutria fera]

(Guiness World Records 2000. Danger & disaster – Animal attack: 200-201 p.より)

 ブラジルに生息するクモの一種.強力な神経毒をもつらしい.


★ [世界一「強力な毒をもつ」ムカデ — Scolopendra subspinipes]

(Guiness World Records 2000. Danger & disaster – Animal attack: 200-201 p.より)

 ソロモン諸島に生息するオオムカデ科の一種.



(研究主幹:シラトリ・ヨシエ)