主婦もびっくり! お手軽・かんたん・手間いらず! - ハサミムシの飼育

 現在わたしは,2種類のハサミムシを飼育している.1種類は大阪府Y川の河口付近の砂地でごみ掻きにより採集し,もう1種類は兵庫県M川の中流域河川敷の礫地で石おこしにより採集した.それぞれの種名は,おそらく「ハマベハサミムシ」と「オオハサミムシ」であると思われ,どちらも普通種のようだ.実際,採集したポイントでは,狭い範囲に複数個体が生息し短時間で多数を採集することができた.
 そんなハサミムシを,何か生物学的な実験に使えないかと考えている(※1).そのためには,対象となる昆虫の採集法と飼育法を確立することは大変重要である.本記事では,わたしが採用しているハサミムシの飼育方法(装置)について紹介したい.


 本記事の見出しでは,「お手軽・かんたん・手間いらず!」と家庭用品(商品)の手軽さを説明するかのようにうたっているが,昆虫の飼育も基本的には同じようなコンセプトでとらえたいものである.特に特定の昆虫を実験に用いるとなると,飼育の手間を極限まではぶき,そして何より安上がりなのが理想である.
 なお,冒頭で主婦という言葉を使っているが全く関係ない.ほとんどの主婦は,ここで紹介する飼育装置のお手軽さにではなく,ハサミムシの気持ち悪さとその臭さに「びっくり」するかもしれない.



 [ケース](写真参照):

・容器は,約20cm x 10cm x 4cm(適当な測定)のタッパーを使用している.


 [えさ](写真A):

・基本的には,市販の熱帯魚のえさ(フレークタイプ)をあたえている(※2)

・100円ショップにあるフレークタイプの金魚のえさでも代用可能.

・たまに生えさもあたえる.オオハサミムシには小型のミミズなどがよいようだ.

・ハマベハサミムシには,ホワイトチョコレートがよい.わりとよく食する.

・今後,色々と試してみたいものである.


 [隠れ家](写真B):

・普通紙を波板状に折ったもの.オオハサミムシには,かなり有効である.


 [自動給水装置](写真C):

・弁当用の小さい醤油入れに水を入れ,入り口にガーゼをつめたもの.

・湿気調節ならびにハサミムシの水飲み場となる(※3).


[今後の展望]

・ ハサミムシはクサイ!特に,ハマベハサミムシの臭いは半端ではなく,蓋をした飼育ケースをあけると生臭いにおいが鼻にくる.もしかしたら,この臭いがハサミムシの生態を調べる上でキーになるもかもしれない.

・ しかし,わたしとしては色々とお金がかかりそうなので,臭いに関連する実験は大々的にはできない.そこで,臭いとは関係のない実験を行おうと思っている.そして,できればこのハサミムシたちの「香り」を消臭したいものだ.現在考えているのは,ゼオライトを用いることである.これは匂い消しとして一般に使われている鉱石である.あるいは,猫のトイレなどに用いる「砂」もよいかもしれない.

・累代飼育を望むなら,まだまだ一工夫必要だと思われる.石膏あたりを使ってハサミムシの産卵・育児室を作ってみたい.

・できればもう少し改良して,どこかの雑誌に発表できればと思っている.


[ちなみに余談だが・・・]

 ハサミムシは,捕食や闘争する際にハサミを使うようである.以下はオオハサミムシの共食いシーン.



[注釈]

※1)もちろんハサミムシは,文化昆虫学の研究対象でもある.ハサミムシの文化昆虫学は,「大衆文化昆虫学」をコンセプトのひとつにかかげる当研究所の裏看板となるかもしれない.

※2)ハサミムシが,熱帯魚のえさをよく食べることは確認済み.ちなみに,このえさはコオロギ等にも適用可能である.

※3)この原理を利用して,フタホシコオロギの産卵場を作ることも可能.



(所 長:アベ・サダ)