ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (9) ポケットチーフに群れるチョウ

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 妄想昆虫採集とは - 昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された生き物たち,すなわち「妄想昆虫(※)」を採集・目撃観察するという試みです.「妄想昆虫」は,ひとびとの心(観念)という「選択圧」によって独自の「進化(妄想進化)」をとげ,衣類の上や商品のパッケージなど,実にさまざまな場所に「適応放散」しています.さあ,一緒に「妄想昆虫」をさがしてみましょう.地道な「妄想昆虫」の採集・観察活動は,文化昆虫学の研究をすすめていく上で,新たなインスピレーションをあたえてくれることでしょう.

※ 「妄想昆虫」「妄想進化」は,当ブログ用にわたしが作った造語です.ご注意下さい.


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 前回の「ぼくらの妄想昆虫採集記」では,日用品のなかで群生する妄想昆虫の一例として「こたつに群生するトンボ」を紹介致しました.実際の昆虫が群れているというと人は恐怖や嫌悪感をいだいてしまいがちですが,特定の種類をモチーフに適度に象徴化した昆虫の場合には,たとえそれが群生していたとしても否定的感情をいだかない(あるいは軽減される)と思われる場合があるようです.


 さて,今回も日用品に昆虫が群生している例をご覧にいれましょう.

 今回紹介する日用品は,紳士の必須アイテム(?)であるポケットチーフです.


 図柄の部分を拡大します.


 このように,ポケットチーフにはチョウが群生していました.やはり,昆虫が適度にシンボライズされています.いや,このポケットチーフのチョウ達は一見すればチョウだとわかりますが,触角がなくなっているなどかなり極端にシンボライズされているようです.分類群的も,おそらくチョウ目は申し分ありません.チョウは,昆虫のなかでも特に審美的価値を見いだされやすく,文化的適応度の高い昆虫といえるでしょう.チョウというと,何かと女性のアクセサリに用いられがちな気がしますが,このように紳士のアイテムにも適応可能なようです.しかし,男性用のアイテムの適応しているだけあってか,このポケットチーフのチョウの翅は角張っており胴体も太く,タテハチョウのようにどことなく力強さみたいなものを感じます.


 余談ですが,わたしは何故かこのチョウの群れを見ていると,かつてのシューティング・ゲームである「ギャラクシアン」を思い出してしまいます.極端にシンボライズされたチョウが,規則正しく並んでいますので・・・.


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 妄想昆虫の採集・観察記録を蓄積することは,「どのような種類の昆虫が,どのような文化メディアで用いられているのか?」という文化昆虫学における根本的な問題を解明するために,大変重要なことだと思われます.あなたも,わたしたちと一緒に,「妄想昆虫」を採集しませんか?

 求!情報!



(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)


※妄想昆虫採集に関する詳細は,以下をご確認ください.

[妄想昆虫について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (1)

[妄想進化について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (2)