リアル妄想昆虫採集記 - マリア様の箱船

 本研究所では,昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された昆虫の特徴を有する生き物たちを「妄想昆虫」と呼び,それらを本ブログの「ぼくらの妄想昆虫採集記」において紹介している.さて,今回の記事では「妄想昆虫採集」ではなく,「リアル妄想昆虫採集」について書いてみたいと思う.

 「リアル妄想昆虫採集」 - 「妄想」なのに「リアル」とは,またなんだかよくわからないとりあわせであるが,つまり「人間の文化メディアにおいて,モチーフとしてよく用いられるオリジナルの昆虫を実際の自然から採集しよう」という試みである.それでもややこしいのでその例えを述べると,アクセサリーのモチーフとしてよく用いられるアゲハチョウ(ナミアゲハ)を実際に網を使って採集する・・・などということである.

 さて,今回の「リアル妄想昆虫採集」は,2010年3月16日に実施した.採集地は,以前に本ブログの記事でも紹介している(ハマベ)ハサミムシの採集をおこなったY川河口である.

 この採集地を選んだ理由は,とりあえず飼育実験用にハマベハサミムシを追加採集するためである.狙いに定めた「リアル妄想昆虫」は,基本的には草原性で春先の河川敷であればいろんなところで見かけることができるド普通種なので,とくにこちらで採集ポイントをしぼる必要はなかった.

 ハマベハサミムシの採集成果については別の機会に報告するとして,とりあえずは採集した「リアル妄想昆虫」をご紹介したい.

 とりあえず虫自体は何も悪いことをしていないが,写真にモザイクをかけてみた.しかしながら,このモザイクのかかった写真をみても種類がわかってしまいそうである.

 そう・・・

 ナナホシテントウCoccinella septempunctataである.Hogue(1987)は,自身の文化昆虫学の総説において文化的に重要な昆虫としてテントウムシを挙げていないが,わたしはテントウムシの人間社会に対する文化的影響度はきわめて高いと思う.実際に,西洋文化においてはテントウムシは幸運の虫として扱われ,それらをモチーフにした日用品が数多くでまわっているのである.日本でも,西洋文化の影響を受けてか,テントウムシの人気はきわめて高く,やはりテントウムシグッズの種類も豊富である.

 テントウムシグッズには,特に赤色と黒色を基調にしたものが多いようであり,それはテントウムシの仲間でも特にナナホシテントウやフタモンテントウ Adalia bipunctataを彷彿させる.ただし,何故か斑紋の数や配置については実物を反映していないものが多いように思われる.その点については,今後テントウムシの「妄想昆虫採集(昆虫グッズ集め)」をさらに継続して,データを収集し検証していきたいと思う.



(主任研究員:イケダ・カメタロウ)