赤松の郷 昆虫文化館(播磨昆虫民俗資料館)

 「赤松の郷 昆虫文化館(播磨昆虫民俗資料館)」 は,兵庫県上郡町の閉園した幼稚園を利活用した施設である.この施設は,単にエキサイティングな博物館というだけでなく,若年齢層の人口減少に伴い増加している廃校(幼稚園)を利活用した好例でもある.用途廃止となった公共施設の利活用は,日本の人口問題と財政問題に関連した都市計画分野における課題の1つである.

 いざ昆虫グッズ展示コーナーに入ると・・・正直度肝を抜かれた.それは,展示品をみたとたんに口が開き,大量の汗が流れ出るほどである(本当の話).そこには,貴重で多品目にわたる昆虫グッズが所狭しと並べられているのである! 昆虫グッズに興味のある方,文化昆虫学や民族昆虫学の研究をされている方は是非とも足を運んでいただきたい.

 詳しくは,こちら・・・
  http://webtaro.com/~akamatsunosato/

(研究主幹:シラトリ・ヨシエ)

初心者のための妄想昆虫採集ガイド(1)ヴィレッジバンガード

 本物の昆虫と同様に,妄想昆虫もまた,日本社会のいたるところで見かけることができる.しかし,妄想昆虫採集においても,妄想昆虫を採集しやすい場所があるのもまた,本物の昆虫採集と同様である.たとえば,虫屋(カミキリ屋)は,サハリンやオトメクビアカハナ,スミイロハナなどをねらって御岳に,フェリエベニボシをねらって奄美大島に行くのだ.というわけで,妄想昆虫をはじめたいという方のために,時々妄想昆虫ガイドについて執筆したいと思う.

 第一回は,ヴィレッジバンガードである.サブカルチャーグッズ御用達の店であるが,店内にはしばしば昆虫グッズを見かけることができる.

 採集成果は安定せず,コンスタントに妄想昆虫を採集することはむずかしいが,タイミングがよいと至る所に昆虫グッズを見かけることができる.妄想昆虫採集をはじめたい方は,是非とも一度足を運んでいただきたい.


(主任研究員:イケダ・カメタロウ)

ぼくらの妄想昆虫採集記「文化昆虫学フィールドレポート」(16)甥の帽子に住まうクワガタムシ「俺は強いぞ!」

ひとは

 むしをみて

   なにをおもう


 妄想昆虫採集とは - 昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された生き物たち,すなわち「妄想昆虫(※)」を採集・目撃観察するという試みです.「妄想昆虫」は,ひとびとの心(観念)という「選択圧」によって独自の「進化(妄想進化)」をとげ,衣類の上や商品のパッケージなど,実にさまざまな場所に「適応放散」しています.さあ,一緒に「妄想昆虫」をさがしてみましょう.地道な「妄想昆虫」の採集・観察活動は,文化昆虫学の研究をすすめていく上で,新たなインスピレーションをあたえてくれることでしょう.

※ 「妄想昆虫」「妄想進化」は,当ブログ用にわたしが作った造語です.ご注意下さい.


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 2012年7月某日.

 うちに弟夫妻が子供を連れて遊びにきました.一緒に昼食をとり,そのあとは甥2人とひたすら遊んでいました.で,夕方になって彼らが帰ろうと準備をはじめたとき,ふと甥(長男)の帽子に目をやりました.すると,こんなところに昆虫がいるではありませんか!クワガタムシです!

 この帽子は言っています.「クワガタムシは強い!クワガタムシは今日も戦っている!」と.プリントされたクワガタムシは,妄想進化率が低くかなりリアルです.クワガタムシは,そのままの姿でも闘士を象徴しているのでしょうね.

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 妄想昆虫の採集・観察記録を蓄積することは,「どのような種類の昆虫が,どのような文化メディアで用いられているのか?」という文化昆虫学における根本的な問題を解明するために,大変重要なことだと思われます.あなたも,わたしたちと一緒に,「妄想昆虫」を採集しませんか?

 求!情報!



(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)


※妄想昆虫採集に関する詳細は,以下をご確認ください.

[妄想昆虫について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (1)

[妄想進化について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (2)

ハサミムシの不名誉な俗称 - ハサミムシと大衆の文化昆虫学考(その1)

「私をここに導いたのは,K氏からの一本の ”ファンタジーア(※1)あふれるキラーパス” であった」

 最近(2010年ごろから),わたしはハサミムシに興味をもちはじめており,その採集と飼育をおこなっている.もともとわたしは甲虫屋であり,ハサミムシには全く興味がなかった.しかし,(1)ハサミムシの生態系における機能的重要性が注目されつつあること,(2)ハサミムシは比較的身近に生息する昆虫で採集しやすく,かつ飼育も容易であること,(3)ハサミムシの生態学的知見は少ないことなどから,何かこいつを使って新しい実験ができないかと考えたわけである.


 当初,わたしはハサミムシを単に生物学的な目だけでみていた.ハサミムシに関して言及している文化昆虫学関連的な知見は,少なくともわたしの知っている範囲ではなく,それほど注目されているようでもない.また,社会に対して文化的なインパクトのある昆虫とも思えなかった.だから文化昆虫学的には,もともとハサミムシはノーマークだった.しかし,ハサミムシに関するある話を聞くことで,わたしのハサミムシに対する見方は大きくかわった.

 ある日のこと,わたしは飼育しているハサミムシをふたりの関西人K氏(男性50歳代)とM氏(女性80歳代)に見せた.わたしは,ハサミムシを見せることで,特にこの二人から有益なコメントを期待したわけではない.ふたりとも虫屋という人種でも,ナチュラリストでもない.二人にハサミムシを見せようと思った動機は,単に「おもちゃを見せる子供のような」感覚 – つまり,わたしの自己満足からだった.

「かっこええやろ?」

 二人にハサミムシの入ったタッパーウェアを差し出し,わたしはそう言った.

 それを見た二人のリアクションは.

「・・・」

 ・・・普通.

 というより,二人とも目がよくないので,この小さい虫がよく見えなかったようである.

 そこで,わたしはハサミムシの入ったタッパーをK氏に渡して,よく見てもらった.目をハサミムシに近づけてじっと見るK氏.

 そして数秒後・・・,K氏は思いもよらないことを口にした.


「・・・ああ,”ちんぽばさみ” か.」

「!?」

え?え?何ですか,それは?

「この虫,”ちんぽばさみ” やないか?」

「!!!」

 まさに世界が反転するかのような錯覚をおぼえた.まさにK氏のこの台詞は,K氏からわたしに向けられた「ファンタジーアあふれるキラーパス」であった.

この俗称は,大衆によるハサミムシの見方をほのめかしているのではないだろうか – そう感じた.わたしがもっとも欲していたタイプの「文化昆虫学的知見(つまり,大衆文化昆虫学に関連した情報)」に思えたのだ.



 このハサミムシのことを指す”ちんぽばさみ”という下品きわまりないネーミング・・・おもしろい!こんな生物名がこの世にあったのか!

 そして,「”ちんぽばさみ”をめぐって次々とわきあがる疑問.

 (いったい何故,こんなネーミングになったのだろうか?)

 (この俗称に対して,どんな意味づけをすればいいのだろうか?)

 (・・・)
 

 しかし,K氏はいう・・・

「でも,これは一般的にそう言われてたかどうかはわからんぞ.仲間内だけで使ってた言葉かも知れへん.」

「わかった.」


 そこで,わたしはK氏の言っていた「”ちんぽばさみ”という言葉が実際に使われていたのかどうかを,インターネットで簡単に調べてみた.

 そして・・・わかったのは,「K氏の言っていたことは,どうも本当らしい.」ということであった.

 インターネットのいくつかの記事にも,”ちんぽばさみ” やそれに類する言葉(ちんぽきり)などがハサミムシの俗称として使われているとのことが記述されている.


 ”ちんぽばさみ”・・・.ハサミムシから見れば,実に不名誉な名前だ.彼らはこう思っていることだろう.


「俺を”兵隊虫” (※2)みたくかっこいい名前で呼んでくれ!」

「不公平じゃないか!」

と.

 「ツマグロカミキリモドキ – “兵隊虫”」と「ハサミムシ – “ちんぽばさみ”」,このネーミングの違いは,彼らにしてみれば果てしなく大きいのではないだろうか?

 K氏からわたしに向けられた「ファンタジーアあふれるパス」 - わたしのハサミムシに対する文化昆虫学的な興味はここからはじまった.もっともこれは,パスの受け手が文化昆虫学に興味をもっているわたしでなければ,スルーされていた可能性もある.と言う意味では,K氏とわたしによる「ファンタジーアあふれる共演」といえるのかもしれない.

(たぶん続く・・・)



(所長:アベ・サダ(←※3))


※ 1)ファンタジーア:
 イタリア語で「霊感」や「想像力」を意味する.基本的にはサッカー用語として用いられる.ファンタジスタの語源.ファンタジスタとは,サッカーにおいては神業的ボールスキルをもち,一本のパスやダッシュで局面をがらりと変える選手(たとえば,中村俊輔など)のことである.「ファンタジーアあふれるパス」とは,局面をがらりと変えるパスと読んでいただきたい.

※ 2)兵隊虫:
 関西におけるツマグロカミキリモドキの俗称.いつかこの虫の俗称についても話をしたいと思っている.

※3)追記:
 この話を,まさかわたしが書くことになろうとは(本当に偶然です).

みんなの文化昆虫学的詩 - 秘密結社「ショッカー」に入りたい

<みんなの文化昆虫学的詩シリーズ>


 本日は,本ブログの読者Tさんから送られてきた一通の手紙に書かれていた一編の詩を紹介したいと思います.読者Tさんは,昆虫の研究者になりたいのでしょうか?

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<秘密結社「ショッカー」に入りたい>


 秘密結社「ショッカー」に入りたい.

 なぜならば,たっぷりと昆虫の研究をさせてくれそうだから.

 昆虫と人間をかけあわせるという研究,

 倫理的には問題ありだけど.


 しかし,それだけの技術があるならば,

 悪事をはたらかずとも,十分世間でやっていけるんだけどね.

 目的が世界征服だからか・・・.

 でもだったら,もっと「まじめに」戦いなさい.

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 「ショッカー」とは - 仮面ライダーに登場する謎の国際的秘密組織.「ショッカー」は,動植物のもつ能力とメカニズムによる強化を加えた改造人間を使って世界制覇をたくらむ悪の秘密結社という設定です.ゆえに,ほとんどの怪人は動植物由来の改造人間で,怪人の名前もそのモチーフにちなんでいます.昆虫系の怪人が多いというのも,うなずけるというものです.

 ちなみに,仮面ライダー自身もショッカーにて改造されたバッタ人間です.きっと,ショッカーの研究員のなかには,かなりマッドな昆虫研究者がいるのでしょうね.ショッカーという組織は,善であれ悪であれ生物多様性の価値(重要性)については熟知しているものと思われます.もしかして,ショッカーは世界征服をたくらみつつも,自然保護活動については熱心であり,立派な信念と一流のノウハウを持っているのではないでしょうか?

 ここで注意したいのは,仮面ライダーは正義の味方ながら,もともとは悪の組織の戦闘員としての役割を与えられようとしていたという点です.つまり極論を述べると,ある意味で仮面ライダー→バッタ→悪の象徴とも考えられるのです.でも,何で仮面ライダーだけが,ショッカーをぬけだそうと思ったのでしょうか?


(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)

ぼくらの妄想昆虫採集記[文化昆虫学フィールドレポート](15)クリーニング屋のカブトムシ「ケンちゃん」

ひとは

 むしをみて

   なにをおもう


 妄想昆虫採集とは - 昆虫(ムシ)たちをモチーフに,ひとびとの創造あるいは妄想によって生み出された生き物たち,すなわち「妄想昆虫(※)」を採集・目撃観察するという試みです.「妄想昆虫」は,ひとびとの心(観念)という「選択圧」によって独自の「進化(妄想進化)」をとげ,衣類の上や商品のパッケージなど,実にさまざまな場所に「適応放散」しています.さあ,一緒に「妄想昆虫」をさがしてみましょう.地道な「妄想昆虫」の採集・観察活動は,文化昆虫学の研究をすすめていく上で,新たなインスピレーションをあたえてくれることでしょう.

※ 「妄想昆虫」「妄想進化」は,当ブログ用にわたしが作った造語です.ご注意下さい.


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 9月某日.

 大阪のM商店街に行きつけのラーメン屋があります.いきつけというだけあって何度も通っているのですが,その隣にどんな店があるのかなどということは気にもしていませんでした.しかし,それこそが盲点だったのです.こんな都会のど真ん中には,樹液のでるクヌギやコナラ,ヤナギの木はありませんが,それでも里山の王者カブトムシが生息しています.しかし・・・

 このカブトムシのイメージは,「強い」とか「かっこいい」というものではなく,むしろ「かわいらしい」でしょうか.何故にクリーニング屋さんのシンボルにカブトムシが起用されたのか・・・もしかして都会のカブトムシは,クリーンビートルというだけあって,樹液ではなく服についたシミを吸って生きているのかもしれませんね.


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 妄想昆虫の採集・観察記録を蓄積することは,「どのような種類の昆虫が,どのような文化メディアで用いられているのか?」という文化昆虫学における根本的な問題を解明するために,大変重要なことだと思われます.あなたも,わたしたちと一緒に,「妄想昆虫」を採集しませんか?

 求!情報!



(研究員 / 普及員:ツマキ・マツキチ)


※妄想昆虫採集に関する詳細は,以下をご確認ください.

[妄想昆虫について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (1)

[妄想進化について]

  ぼくらの妄想昆虫採集記 [文化昆虫学フィールド・レポート] (2)

墓場にて・・・

 6月19日.

 その日法事(母親の13回忌)と言うことで親戚が寄り集まって,墓参りに行きました.
 お墓は家の近所にあります.
 私は信仰心はあまりもたないのですが,お墓に花を添え,みなで手をあわせて拝みました.
 そして,家に帰ろうとしたその時でした..
 うちのお墓の近くにある別の方のお墓に刻まれた文字を見ました・・・

 「玉虫家之墓」
 「え?」

 そうです.この近所には玉虫さんという名の方がいらっしゃるのです!
 蛍を冠した名前は時々聞きますが,ここまでダイレクトな名前は聞いたことがありません.
 何故名字が玉虫なのか,その由来を調べてみたいものです.

 (研究主幹:シラトリ ヨシエ)